◆部屋のドアの内開きが基本、ではトイレの場合は?
ドアの内開きとは部屋の内側に向かって開くこと、外開きはその逆で部屋の外側に向かって開くこととなります。
一般的に住宅の場合、部屋に入るドアは廊下から室内に向かって押して入る開き方、つまり内開きが基本です。
その理由は、外開きではいろいろと不便なことが起きる可能性があるからです。
廊下は狭く逃げ場がありません。
そんな狭い廊下側にドアを引いて開けるには、身体をねじったりよけたりする必要があります。
また狭い廊下側にいきなりドアが開けば、廊下を通っている人とぶつかる危険があります。
その点、部屋に向かって押して入るように開けば、出入りはスムーズですし、危険もありません。
またドアを通じて部屋に招き入れるという意味からも、部屋のドアは内開きであるのが自然です。
しかしトイレのドアとなると話は別です。
築年数が新しい家は外開きが多く、古い家では内開きの家も多く見られます。
年代によって開き方が違うのにも、理由があるのです。
◆古いトイレのドアは内開きが多い
築30年より古い住宅の場合、トイレのドアは内開きの仕様が多いです。
もちろん面積が狭く便器にぶつかってしまうような場合は、外開きになります。
しかし、トイレは狭い廊下に面して作られていることが多いため、中に開く余裕がある場合は内開きにするケースが多く見られました。
その際は、トイレの床は敷居より一段下げて作るのが一般的です。
その寸法は約10cmとかなり大きな段差となり、バリアフリーでは、よく問題になる箇所でもあります。
ではなぜ、段差を作るかと言えば、ひとつめの理由として、トイレのスリッパがドアに引っかからないようにするためです。内開きでドアを開ければ、床に置いたスリッパにぶつかってしまいます。
そこでスリッパの高さの分、床を下げることで引っ掛かりを解消しました。
また以前のトイレは床をタイル張りにして、水を流して掃除ができるよう、床に排水口を作る家もよくあります。
そうなれば当然、水があふれないよう、トイレの床は廊下より一段下げて作る必要があったのです。
◆新しい住宅のトイレのドアは外開きが基本
新しい住宅ではトイレのドアは外開きが基本です。
これは、トイレの中で脳溢血で倒れるケースが多いくなり、その際に倒れた身体が邪魔になり外からドアを開けて助けに入れないことなどが周知されたことによります。
トイレのドアが外開きなら、中で人が倒れていてもすぐに助けに入ることができます。
住環境と健康に関する意識が高まるにつれ、トイレのドアに限っては外開きの方が安全性が高いと考えられるようになったのです。
リフォームでも、1990年代頃からバリアフリーリフォームが一般的になり、床の段差を無くしたり手すりを付けたりといった工事が増え始めました。
そうなると、困るのがスリッパ置き場です。
トイレの床の段差を無くしてバリアフリーにすると、内開きドアではトイレのスリッパを引っ掛けてしまいます。
そこで段差の解消と一緒に、ドアを外開きにするリフォームも増えるようになりました。
健康意識が高まり、バリアフリーで床に段差の無いトイレが増え、洋式便器が増えて掃除が楽になり、トイレの床に排水口を作る家も少なくなり、このような変化と共に、トイレのドアも自然に外開きが増えていったのです。
ただし外開きのデメリットである、廊下にいる人と衝突しやすいという面については対策をしておかなければなりません。例えば、通行人とドアがぶつからないようドアの周辺を壁より引っ込ませたり、ドア幅を小さくしてジャマにならないようにしたりなど、安全で使いやすい外開きの工夫が必要です。
◆トイレのドアのメリット・デメリット
住宅のトイレにおける、内開きと外開き、それぞれのメリット・デメリットを改めてお伝えします
内開きのメリットは、ドアを開けても廊下にいる人と衝突する危険が無いこと、ドアを開け放したままでも通行の邪魔にならないことです。
デメリットは、床に段差が無いとスリッパとぶつかってしまうこと、狭いトイレでは中で身動きがとりにくくなること、
もちろん車いすでは更に使いにくく、また中で倒れた時に身体がジャマになり外から助けに入れないなどです。
外開きのメリットは、狭いトイレでも中で身動きが取りやすいこと、ドアの開閉の際にスリッパがジャマにならないこと、中で倒れても外から助けに入りやすいことです。
デメリットはドアを開けた時、外にいる人とぶつかる危険があることです。
このように考えていくと、ドアを開けた時の危険さえ防ぐことができれば、トイレは外開きが便利であることがわかります。
◆新しいトイレドアの形、引き戸やスライド折れ戸で更に便利に
さて、現在の家づくりのトレンドでは、トイレのドアは内開きor外開きという2択から、もっと便利で安全なドアが登場しています。例えば、引き戸にすれば、開け放しても廊下側のジャマにならず、狭くても比較的身動きがしやすく、車いすでも使いやすいなど、内開きと外開きの弱点をカバーしながら更に安全に暮らせるようになります。
引き戸を取り付ける袖壁が無い場合は、開き戸よりも室内外に干渉が少ない、折れ戸のような形状のドアもあります。
トイレのドアの開き方ひとつでも、これだけ様々な理由があります。新築やリフォームの際には、日々の暮らし方をよく確認し、細やかな配慮で本当に暮らしやすい家づくりを考えましょう。