悩み回答はチャットで
新型コロナウイルスの感染懸念から「受診控え」が広がり、他の病気の重症化リスクも高まります。その解決にもスタートアップが一役買います。
14年創業のアナムネ(東京・中央)は、生理不順など体の悩みを抱える女性向けに医療相談を手掛け、女性医師と契約し、相談したい女性と医師をマッチングさせる。24時間365日、チャット形式で受け付ける。内科や産婦人科、皮膚科など各専門の計約60人の医師が相談に応じる。
毎月、全体で200件ほどの相談が寄せられる。センシティブな悩みを扱うため、表情の見えないチャットにすることで相談の際の心理的なハードルを下げた。受診が必要となれば医療機関につなぐほか、通院が難しいユーザーには、ビデオ通話によるオンライン診療も提供します。
菅原康之社長はサービスについて「病院に行く前の不安に丁寧に応えられるのが強み」と話します。チャットでは費用を気にせずいつでも相談できるよう、月あたり980円の定額料金制にしている。
介護施設の人材不足もカバー
介護施設向けにオンライン医療相談を手掛けるのはドクターメイト(東京・港)。
床ずれや皮膚のかゆみなどといった入所者の体の悩みについて、施設スタッフが専門人材に聞けるサービスを提供。「左膝から足先にかけて強く痛がっています。受診すべきですか?」といった質問が、日々寄せられています。
スタッフが入所者の状態を記した文章と写真をタブレット端末などからアップロードすると、ドクターメイトに所属する医師や看護師が対処方法などを答えます。病院に行くべきかどうかをアドバイスし、症状などを記したリポートの作成も代行してくれます。
午前8時半から午後5時までは医師がチャットで対応し、午後5時から翌日朝の午前8時半までの間の急な相談は看護師が電話で受け付けます。18年の開始から237施設に導入され、特に直近の1年間で導入施設は約3倍に増えました。
高齢者が入る施設には介護スタッフのほかに看護師が付く場合があるが、医療人材は慢性的に不足しています。
夜になれば施設の看護師が帰宅してスタッフだけとなり、入所者に健康上のトラブルがあっても判断が難しくなります。結果的に軽症でも救急車を呼ぶケースが少なくなかった。
費用は介護施設から支払い、施設の業態などにもよるが、定員100人の特別養護老人ホームで24時間相談サービスを契約した場合は月額18万円からとなります。
使い勝手の良さ出せるか
新型コロナもきっかけにサービスの利用が広がるなか、既存のオンライン診療システムにも改めて目が向き始めています。
神戸市に住む佐藤彩花さん(仮名、20歳代女性)は、メドレーのシステムを通じて天下茶屋あみ皮フ科クリニック(大阪市)の山田貴博院長の診察を受けました。もとは神戸の自宅から山田氏のクリニックに通っていたが、家庭の事情で半年前から鳥取県と神戸を行き来する生活になったため、オンライン診療を使うようになったといいます。
既存のオンライン診療システムも改めて認知が進む(大阪市の天下茶屋あみ皮フ科クリニック)
山田氏が「妊娠に備えて皮膚炎の薬を変えましたが、その後の体調はいかがですか」と話しかけると、パソコン画面の向こうから「薬を変えてむしろ体調が良くなりました」と佐藤さん。アトピー性皮膚炎を抱えるがこのほど妊活を始めたため、普段飲む薬を胎児への影響がないとされる別の薬に変えていました。
フォローアップのための診察は、オンラインで約10分で終了しました。通院ならこうはいかないです。佐藤さんは「コロナ禍でなるべく電車に乗りたくないので、オンライン診療は生活に欠かせなくなった」と話しました。
オンラインで健康相談や受診ができるサービスの必要性は高まる一方。利用者にも医師にも使い勝手の良い仕組みを作れるかが課題で、スタートアップの機動力がカギを握ります。