私と建築の関わりは、高校時代の担任の先生に言われた何気ないひと言から始まりました。最初は「まあ、それもいいかなぁ」くらいの気持ちで入学した大学の建築科でした。
そして学校卒業後に地元の工務店に就職したのが私のこの業界への第一歩でした。
まさかここまで家づくりに魅せられるとは…。
あの時は、まったく想像もしていませんでした。
というのも、初めて就職した現場監督とは名ばかりで、毎日現場の片付けや職人さんの下での作業など「3K」どころか「4K」、「5K」の辛い毎日でした。
私の頭の中では常にネガティブな思考がいっぱいでした。そんな上司から言われたことを嫌々こなすだけの日々が続いたある日、転機が訪れました。
とあるケーキ屋さんの店舗を工事したときのことです。お引き渡し後、お客様がオープン前のセレモニーに招待してくださったのです。
当日、私にとっては初めての経験で緊張をしていたのですが、セレモニーの冒頭でお客様が次のような挨拶を述べられました。
別に私に感謝してくださった訳ではないのは言うまでもありません。でもこのとき、私は気づいたのです。
「ああ、そうか。自分にとっては辛くて嫌な現場がひとつ終わっただけのことが、お客様にとってはここからがはじまりなのだ。そして『ありがとう』って喜んでもらえる仕事だったのだ」ということに。
それまでは、100あるうちの99の現場仕事が、本当に嫌で辛くて…
あのときのお客様の言葉があったからこそ、
「建築っていいな」
「お客様が喜んでくれるって、なんかうれしい」と、建築仕事の面白みに気付き、今日まで続ける事が出来たのだと私は思います。
今思いだしても本当にありがたい経験でした。
こうして自分の考え方が変わると、仕事の意味が知りたくなり、どんどん建築に没頭していくようになりました。
その後月日は流れて気がつけば、住宅から公共施設、木造から鉄筋コンクリート造まで様々な現場を経験しこなせるようになっている自分がいました。
「自分が持つ知識と技術を使って、本当にお客様に喜んでもらえる建築がしたい」
私はその想いひとつで1998年に独立をいたしました。
想いを胸に秘め独立した私ですが、しばらくは仕事らしい仕事もなく、開店休業状態が半年以上も続きました。
仕事はないし、貯金はなくなるし、家族の生活が掛かっているし。どこかの会社に再就職でもしようか、ということも考えはじめたそんなある日、友人からの一本の電話がありました。
友人「おうっ、関谷! 久しぶり。お前、独立したんだって? すごいじゃないか」
私 「んんっ? ああ、まぁーな」
友人「どうした。元気ないじゃないか。ところで、今度うちの叔父さんが家を建てたいって言うんで、お前のことを話したら、じゃあ1回相談に乗ってもらおうかなぁって言うんだよ。どうだ、頼めるか?」
私 「えっ、本当か? おおっ是非、やらせてくれよ!」
これが私の初めての仕事になりました。
この時のやりとりは今でもはっきりと覚えています。
その後もほとんどのお客様が紹介からという出会いの中、気がつけば16年。ここまでやってこられたのも、本当にいい友人、本当にいいお客様に恵まれたからこそだと思っています。
心からありがたく、感謝をしています。
私がこの仕事で一番気をつけていることは、私たちにとって住まいづくりは、日々の仕事であり、いわゆるごく当たり前の日常になります。
しかしながらお客様にとっては、家づくりを行う半年から1年の間で起こるすべてのことが非日常の出来事であり、そしてそれが長い人生の中でたった一度きりの経験になる方がほとんどだという事です。
そしてこの事を「決して忘れてはならない」ということです。
これらを基本に据えて、お客様との信頼関係を築きつつ、ご満足いただける住まいを提供し続けていくこと。
それこそが、私たちが大切に抱いている「想い」なのです。